逢いたい・・・ 勇の心の中のとある交差点・・・ 彼の意識が往来するそんな中女が一人いた。 赤いその髪を、街灯の光が照らしだす。 女の方へ歩む・・・ それが出会いだった。 雨の日だった。女は,に滴りながら勇を待っていた。  家の暖炉の前に吊るされた席れたコート。   カーテンを透けて妖精のように揺れているシルエット。 夜の呪縛が二人をひとつにする。暖かく照らしていた火が消えた。 月の微かに寂しい光がずっと二の小さな空間を無限の時へと写し換える。  時のない、音のない、鼓動にない空間が、いずれ広がり、新たに大地を作りだす。   人のいない、光のない所がそのうち青い声を出す。 止まっていた筈の時が動くと同時にその世界からはじき飛ばされた。  目が回り、感覚を削られた男が一つの光の元素を手にした。   狂気のない、カのない男は何も手を出さず、 しかももう一度そこへ行こうとする。    心に焼きついたその男の思い出は消えることはなく終わりを迎えよう。 勇が死期を迎えていた時、ふとあの日の想いが彼の胸を刺した。   短命に終わる男を前にする女は、どう思うだろう。もう一度逢いたい。    そして”愛している”の一甘を、甘いたい。     男が求め望んだ,は二皮と起こらなかった。 93/10/7