長い夢 ある男は、長い夢のなかにいた。 平和で暖かい、そんな町に彼は住み着いた。 彼の理想の町だった。 そして、彼は恋をした。素敵な女性と同棲を始めた。 普通以上の生活がそこにあった。 数年が過ぎ、二人は結婚し、子供も生まれた。 しかし、ある日、彼の世界は破壊された。 血の雨が降り続け、全てが呑み込まれた。 そして、夢の中での意識も・・・ 妻も、子も・・・全てが彼の前で崩壊した。 最後の彼の心には何も残らなかった。 人はそれを「死」と呼ぶ。 「先生、心拍数が低下しています。」 「判っている。早く終わらせないと。」 「低下して・・・」 「停止しました。」 「駄目ですか。」 「いや、何とか間に合いそうだ。」 「さあ。これからが本番だ。」 「娘は助かりますか。」 「何とか彼女は助かりそうです。彼のHLA(MHC)と合致したのは奇跡に近いで す。」 「でも、提供なさってくださった方は・・・」 「彼も浮かばれるでしょう。」 彼の遺体はモルグで家族を待っていた。 四カ月後彼女は退院した。 ある時彼女は夢を見た、見知らぬ町で、見知らぬ男と、その子供たち 何故か懐かしく、 DEJA一VU 数日後、脳死患者を臓器目的で薬殺した事件が新聞の一面をにぎわした。