Rebellion another R3468 ブロンウイン・リーヴイスの反乱 フルト人僕滅委員会、それはスヴェト軍内にフルト殲滅を日的に作られた部門。 通称ФКР(エフカーエル)のもとフルト狩りが行われていた。 R3465年 某日 フルト領地にて 第14地区作戦司令 ブロンウィン・リーヴィス大佐率いる部隊がとある村を訪れた。 リーヴィスは自ら村の長首に示談を行う。 「我々は東方防衛隊の第14地区担当であります。一部の不穏な行動を起こすフルト人から国家秩序を維持するためにこの地域一帯を監視しております。」 「しかし、先日フルトのゲリラに襲撃され吾が方の兵士が多数殉職しました。しかしながらこの都から遥か離れた辺境の地。彼らを故郷に連れてやることは叶いません。よろしければこの地に彼らを弔ってやりたいのです。」 「そこで少々人夫を貸しては頂けないでしょうか。 日当は一人頭4000ケルンお支払い致します。」 「そういう事でしたらどうぞ、我々の同類が起こした償いもしなくてはなりませんしな。」 長首から了解の回答を得る。 長首は、一行を村の共同墓地へと案内した。 これがリーヴィス隊の手口である。 戦死した兵の弔いに墓を村人に掘らせ、墓を掘りおわった所で村人を集め殺害する。 そして自ら掘り起こした穴に埋められる。墓標も無しに。 勿論後から気づかれないように掘り起こした形跡をも残しはしない。 スヴェト軍は大量のピラ弾をフルト領地に投下し、スヴェトが戦闘を行う正当性を流布し、フルト人を二分させる効果をもたらしていた。 軍は主に二つの撲滅作戦を取っていた。一つは武装したフルト人グループを殲滅さす部隊。もう一つがリーヴィス隊のように平民のフルト人を虐殺する部隊であった。この為フルト人を二分さすことが重要なことであった。 R3467年 某日 リーヴィス隊は新たな殲滅作戦に変更していた。彼らは防疫部隊を装って一つの都市の住人を丸ごと抹殺する方法を取るようになった。 この頃既に墓穴を掘らせるような村が無くなっていたのと、スヴェトに対し武装決起したフルト人が増加していた為である。 この作戦は一つの町の生命線を絶ち、町へ続く道で検疫を行い低感染性の致死ウイルスをワクチンと称して接種していく。町のなかでも同じように接種を行う。このウイルスは発病に一年以上掛かり、幾つもの町を転々として行くため効率が高かったのである。彼らが気づいたころには大半のフルト人が感染者であった。 後にアルマンドが記したワクチンの出荷記録によると、アンプルは500万個を超えていたという。 営舎の食堂でリーヴィスは、うろたえることも無く腰かけ、コーヒーを淹れている。 「私は自分の信念的な目的でもなくフルト人を殺している。私には彼らを弔う気も、哀れに思う気も無い。」 「そうだな、群れる蟻を踏みつぶしたくなるのと同じかな、始めからそういう素質が有ったのかもしれない。」 「いつの間にか私の生き甲斐もそうなってしまった。彼らが絶滅したら私の生き甲斐も無くなってしまうかもしれない。」 彼女はフリッツ・マン少尉にこう告げている。 フリッツはブロンウインにとってライターのようにいつでも彼女燃やしてくれる存在なのだという。 今までブロンウインを抱いたマッチとは違っていた。 「今まで私を抱いた男はマッチのような奴ばかりだ。一夜の間しか火は燃えない。朝になれば燃え残った芯しかない。中には芯も残さぬような男もいた。マン少尉、お前はどうだ?」 フリッツが懐古するに、彼女はそう言って挑発してきたそうだ。 ただ、フリッツは彼女が言うマッチではなかった。部隊内でも公然の秘密ということだった。 R3468年8月10目 スヴェト本部より伝令の者が来た。 「リーヴィス大佐、委員会本部のピカピア少尉と名乗る者が伝令があると申しております。」 「少尉如きが私に何の用だ?構わぬここへ通せ。」 ピカピアが陣の中へ入って来た。 リーヴィスの前で敬礼し、 「私はスヴェト選任委員会待派遣官 アルマンド・ピカピア少尉であります。」 「な、特派遺官だと。」 「はっ!」 「で、その特派遣官が私に何の用だ。」 「評議会議において貴公の作戦に於ける行為が、スヴェトの国家理念に反するとの採決が下され、議決においてブロンウィン・リーヴィス殿の第1級司令官の任を解き軍位を剥奪する事が決定いたしました。」 「よって以後、即座に帰郷いただき、審問を受けていただくことになります。」 「私に降りろというのか。くっそっ、フリーチェどもめ。この歴史に蓋をするつもりか。」 「スヴェトの下衆・フリーチェの野郎が命令したことを忠実に実行してやっていたのだぞ。こんな気だるい仕事を。」 激昂した顔が激しく血色に染まってゆく。 「私は断固この決定には同意せぬ。」 「ご同意頂けないなら、力ずくでも・・」 ピカピアはホルスターから銃を抜く。 「止めろアルマンド。」フリッツが銃を構える。 「フリッツ君、お前も裏切り者になるんだぞ。」 「マン、撃て。どの道スヴェトにとって我々は邪魔者らしい。」 「なっ・・なんだと。」一瞬のフリッツの力みがピカビアに隙を見せた。 二発の銃声が響く。 アルマンドの放った弾はフリッツの頭部を打ち貫いていた。 フリッツはそのまま倒れ込んだ。 フリッツの放った弾はピカビアの肩を射抜いていた。 「マン!!おい、しかりしろ。」リーヴィスががフリッツに駆け寄る。 「死ぬなよ、なあ、なあ、なあ.・・マン.・・」リーヴィスは泣き寄るがマンは答えない。 「私の人生で唯一私の惚れた男を、私を愛した男を.・・・よくも。」 「貴方には脱帽しましたよ。ブロニヤと恐れられた女戦士がこんな男に惚れていたとなんて。」 肩を押さえ這い蹲いながら、失笑する。 「死ね!!」リーヴィスはピカピアのこめかみに銃をあて撃ち抜いた。 「マン。私の唯一の.・・」 「スヴェトを捨て私に付いてくる者はここに残れ。それでもスヴェトに忠識を誓うものはここから去れ。」 「お前たちのお前たちの自由に決めろ!」「どの道も・・・地獄だがな・・・」 ブロンウィン・リーヴィスはスヴェトを捨てた。 スヴェトに帰郷しようとする者たちがトラックに集まっていた。 約80名がトラックに乗り込む。リーヴィスの元に残ったのは、100名あまり。 数時間後、スヴェトに帰ろうとする兵を乗せたトラックに什掛けられた爆弾によってスヴェトにたどり着いた者はほんの数名であった。 リーヴィス隊はその後フルトとスヴェトを敵に、東方へ姿を消した。 3474年組織的集団としてのフルトは壊滅した.・・そして、一人のフルト人の物語が始まる。 その男の名はシダン・バフルーシン。 原作:1993年頃 編集:2007/02/18