烏と女  果の女、智 は今日も遅れている。  公園のベンチで待つこと30分。  この無駄な時間を一匹の烏が潰してくれた。  人懐っこいのかどうかは知れないが、かなり近くへ来て餌をねだる。  智の烏版だなと、そう思った。現に彼女のようにつきまとって粗を取ってゆく。  智が遅れて来るのを知ってパンを買っておいた。そのパンが欲しいらしい。相当空腹な のか、それとも単にいじましいのか、  烏は智が来てからも後を追ってきた。智は烏が嫌いらしく嫌がって逃げる。  果は女のそう云うところが気に喰わない。  次の待ち合わせのとき、男は烏のためにミミを持っていった。  烏はちやんとそこにいた。今日来るのを知っていたいたかの禄に待っていた。  智と違うところは時間に遅れないところだろう。  前より烏は責れていたが、手からパンを食ベ、腕に乗り。智よりも楽しいときを過ごし た。  次の日から毎日烏に通いに行った。 何故かって?それは署と過ごす時より楽しいから。そう勇は答える。  ある日智はそれを知って、ひどく怒った。  嫉妬してくれる女は嬉しいだろうが、けど鳥如きにそ二まで変わってしまった智に男は 的を外した。  数日後、勇は智に別れの話を進めた。智は勇にしつこく迫った。それがいっそう男の決 断を強めた。  あの烏は果に智の本心を教えてくれたのだろう。  本心を知った男は二度と智の前に現れなかった。 93