1 遙かなる共鳴
魔大戦
すべてを焼きつくした、その戦いが終わった時、
世界から「魔法」という力が消え去った
そして1000年… 鉄、火薬、蒸気機関
人々は機械の力を使い、世界をよみがえらせた
今またここに、伝説となった
「魔法」の力を復活させ
その強大な武力によって
世界を支配しようとする者がいる…
人はまた
そのあやまちを
くり返そうとしているのか…
遙かなる丘の上、濃緑色の見慣れぬ機体が三機ほど白色の大地に影を落としていた。
その機体は魔導アーマーと呼ばれるもので、幻獣から魔導と呼ばれる力を抽出して作られている。
その魔導の力を背景に、魔導士や魔導アーマーを手中にし、帝国を築き上げた男。
その男の名を、ガストラと言う。
遙か南の大陸の中心に、帝国首都ベクタを建設し、その中に魔導研究所を設立した。
天才科学者兼発明家、シド=デル=ノルテ=マルケズことシド博士に多額の研究費をつぎ込ませて、生み出された魔導機械の数々。
世界は着々と、彼の手に落ちようとしていた。
今、その魔導アーマーに乗っているうちの二人が互いに顔を見合わせながら、静かに口を開いた。
「あの都市か?ビックス。」
「そうさウェッジ、あれが炭坑都市ナルシェ。魔大戦で氷づけになった1000年前の幻獣が…」
ビックスと呼ばれる男は、その先の言葉を紡ぐのを止めた。彼らにとって今回の任務はかつての伝説を確かめてこいという程度のものなのだ。
「またガセじゃねぇのか?」ウェッジは今回の任務に最初から懐疑的だった。彼にとっては、伝説といっても昔話の域を出ない。それほど実感として存在しないのである。
「フム。だが、あれの使用許可が出るぐらいだ。かなり確かな情報だろう。」
そう言って、二人はもう一機の魔導アーマーに目をやった。
青い目の少女、だがその額には鈍い光を放つ金属製のサークレットがはめられている。機械の上に立つ少女はまるで魂を失ったかのように、その視線が宙にさまよっていた。まるで、機械仕掛けの人形のように。
「生まれながらに魔導の力を持つ娘か…魔導アーマーに乗った兵士50人をたった3分で倒したとか…、恐ろしい…」そう言いながら肩をすくめるビックス。
「大丈夫。頭の飾りの力で思考は止まっているはずだ。俺達の命令で思い通りに動く。東から回り込む。行くぞ!」そう言いながら、すでに魔導アーマーを動かしているウェッジ。その後に続くビックス。少女は顔色一つ変えず、その後に続いた。
白銀の世界、たたきつけるような吹雪。その中を鈍い音をたてながら進む黒い影。漆黒の闇の世界に、天から舞い降りる雪の結晶すらも、黒く思えてしまう、そんな風景が三人の目前に展開されていた。
ナルシェはひどく静まり返っていた。ただ、大きな機械の音がするまでは。
「この娘を先頭にして突っ込む、ザコにはかまうな、行くぞ!」
三機が一直線となって、ナルシェの町を駆け抜ける。
都市を守るガードがその使命を全うしようとする。
だが、それを全て、少女が粉砕していく。魔導アーマーから放たれるビームはとてもガードたちに耐えられる代物ではなかった。ビックスとウェッジは少女がダメージを与えたガードを一人一人とどめを刺すだけでよかった。ナルシェ守備隊の挟み撃ちもバックアタックも全く効果がない。少女の強さは群を抜いていた。
「情報によれば、新たに掘った炭坑から氷付けの幻獣が出てきたらしい…」
ビックスは魔導アーマーの歩を進めながら、少し押さえ気味の声で呟いた。
炭坑を進む三人の前に、突如行き止まりの柵が行く手を遮った。幻獣を守るためのガードたちの仕業らしい。
「俺がやる。さがっていろ!」その声とともに、間髪入れずウェッジがアーマーのままで突進を柵に向かって行った。柵は簡単に音をたてて崩れ落ちる。その奥の闇の中で、一体の妖獣が蠢いていた。
「コイツは…雷を食う化け物…カラに手を出すな!」
その言葉が紡ぎ出される前に、少女は間髪入れず、攻撃を始めていた。流れるように魔導ミサイルを殻から出ている頭部にぶつける。無機質な表情のままで。すると、その妖獣は頭を殻の中に隠し、しばらく様子をうかがっている。三人は頭部が出てくると同時に、攻撃を展開した。妖獣が消滅するのに、さほどの時を要さなかった。
三人はそのまま、奥にある氷の塊に目をやった。そこには太古の昔から、氷付けとなっていたであろう、幻獣がそこはかとなく不思議なオーラを漂わせていた。
「これが…氷付けの幻獣?」ビックスが恐る恐る近づく。
「おい!何か様子が変だ?何か不気味な…」ウェッジが声を上げたと同時に、少女がその幻獣と共鳴を始めたのである!それとともに、氷付けになったモンスターも妖しげな光を放ち始めたのだ。
「な、なんだこの光は!うわああああっー!!」
「か、からだが!!」
ウェッジとビックスはそのまま光の氾流の中に飲み込まれてしまった。そして、魔導アーマーもろとも、この世界から消滅してしまったのである。
少女は共鳴を止めて、その場に倒れ込んでしまった。
これが、少女の運命の始まりであった。
第2節 ただいま絶好調執筆中!(爆笑)しばらくお待ちください。m(_ _)m
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